4月に入るといよいよ固定資産税の納税通知書が届く季節です。
SNS等を見ると「固定資産税高っ!」という言葉が散見されるようになります。
でもこの固定資産税、どうやって算出されているかご存じですか?
場合によっては非常に高くなってしまうのが固定資産税です。
ある程度の金額が見通せていないと後々大きな家計の負担になることも。
当記事では建物にかかる固定資産税について、
- そもそも固定資産税とはどういうものなのか
- 建物にかかる固定資産税額について
- 実際にいくらくらいになるのかシミュレーション
これらをわかりやすく解説していきます。
当記事はこのような方におすすめしています。
- 新築を予定しているけど固定資産税いくらくらいになるんだろう…
- 固定資産税は~%と言われるけど実際どうやって算出すればいいの?
- ライフプランを考えたいけど固定資産税の出し方がわからない…
固定資産税は建物と宅地それぞれにかかりますが、
それぞれ算出方法が異なります。
頭の中がごちゃごちゃにならないように記事を分けています。
宅地にかかる固定資産税について知りたい方はこちらの記事で解説しています。



1.固定資産税と都市計画税
Ⅰ.固定資産税と都市計画税って何?
固定資産税と同時に徴収されるもので、“都市計画税”というものがあります。
まずはそれぞれどういうものかと言うと
- 固定資産税とは
- 毎年1月1日時点で土地や家屋等を保有している場合に課される税金。
- 都市計画税とは
- ”市街化区域”として指定されている所に土地や家屋等を保有している場合に課される税金。
固定資産税の通知と共に通知され、固定資産税と併せて支払います。




市街化区域とは、既に市街化しているところや、10年程の間に市街化を図るべき場所の事だよ
Ⅱ.税率と支払い方法
固定資産税と都市計画税の税額は、
土地・建物の“課税標準額”に税率を掛けて算出されます。




課税標準額については次項で説明するよ!
先に確認したいならこちらから。
税金 | 税率 | 備考 |
固定資産税 | 基本は1.4% | 自治体によって多少差がある |
都市計画税 | 最大0.3% | 自治体によって多少差がある |
これらの税金の支払いは毎年4月頃に送られてくる納税通知書に従い、
基本的に年4回に分けて支払う事になります。




一括で支払う事もできるけど金額はかわらないよ




ちょっとくらいお得にしてくれてもいいのにー!!
固定資産税と都市計画税は同じ納税通知書でまとめられており、
2つの税金を併せて支払うことになります。
2.課税標準額の変化
Ⅰ.課税標準額とは
課税標準額とは、固定資産税の金額を算出するための基になる家の価値の事です。
この課税標準額に固定資産税1.4%、都市計画税0.3%(共に基準税率)を掛けて固定資産税・都市計画税の税額が決まります。
家本体の金額(基礎・外構工事等を除く)のおおよそ50%程度になると言われています。
そして、建物の課税標準額は年々引き下げられていき、
最終的には当初の課税標準額の20%まで下がります。




20%まで下がったら底打ちだよ!以降はずっとこの金額に税率を掛けた税金を支払い続けるよ
課税標準額は建物の場合、毎年一定額引き下げられていきます。
いくらずつ引き下がるのかについては、
国税庁で公表されている建物の耐用年数表と減価償却率表で算出することができます




毎年引き下げられる金額は建物の構造や用途によって変化するよ
減価償却率表の定額法で求められた減価償却率が課税標準額にかかります。
減価償却率が高いほど、1年間で減少する課税標準額が大きくなります。




うーん……




難しくなってきたよね。イメージ的には劣化しやすいものほど減価償却率は高くなるよ。この後で解説するけど、住宅なら鉄筋住宅よりも木造住宅の方が劣化は進みやすいから減価償却率も大きくなるんよ
Ⅱ.木造住宅の課税標準額の変化
木造住宅は耐用年数が22年とされています。
当然ですが全ての家が22年で使えなくなるなんてことはありません。
この耐用年数というのはあくまでも課税標準額を算出するためのものですので、
正直知らなくても問題はありません。




具体的にどーやって計算したらいいの?




実際にどうやって計算するのか見てみよう
国税庁の減価償却率表より、
耐用年数22年の資産の減価償却率は0.046となります。
新築当初の建物の課税標準額(取得原価)が1000万円であった場合、
1000万円 x 0.046 = 46万円
単純な考え方としては、
課税標準額が毎年1000万円…954万円・・・908万円…、
と引かれていくことになります。
しかしながら、後述の評価替えの関係で実際はこうなりません。
課税標準額が200万円(1000万円の20%)まで下がると、
以降この課税標準額が維持されます。
Ⅲ.鉄筋コンクリート住宅の課税標準額の変化
鉄筋コンクリートの住宅の場合は耐用年数が47年とされています。




何で木造住宅に比べて耐用年数が長いの?




単純に丈夫なんよな。長く使えるから、その分長く資産価値が続く。だから耐用年数が長く設定されるんよ




てことは、木造住宅に比べて固定資産税高いの?




そうなんよな!実際にどのくらい違うかみていこか
木造住宅と同様の手順で、減価償却率は0.022です。
新築当初の建物の課税標準額が1000万円であった場合、
1000万円 x 0.022 = 22万円
基本的な考え方としては、
この金額が毎年1000万円…978万円・・・956万円…
と引かれていくことになります。
実際には木造住宅と同様、評価替えの関係でこのようにはなりません。




課税標準額の変化で考えれば木造住宅は毎年46万円、鉄筋は22万円の減少!その差24万円!




ということは鉄筋住宅は長い期間、固定資産税が高くなるん?




そういうことやね!最終的に当初の課税標準額の20%まで下がることに変わりは無いんやけど、そこに落ち着くまでの期間が全然違うんよね。
3.新築の軽減税率
新築住宅の場合、固定資産税の税額軽減特例が受けられます。
(2022年3月31日までに建築の場合)。
以下の期間について、床面積120m2までの固定資産税額が1/2に軽減されます。
さらに、長期優良住宅の場合は長く適用されます。
– | 通常の住宅 | 長期優良住宅 |
---|---|---|
戸建て | 新築後3年間 | 新築後5年間 |
マンション | 取得後5年間 | 新築後7年間 |
仮に1000万の課税標準額であれば、
1000万円 x 1.4%(税率) x 1/2(軽減特例) = 7万円
これが当初の固定資産税の年額となります。




軽減税率無ければ初年度14万円も支払うことに!




えっぐ!でも軽減税率の期間終わったら一気に高く…




確かにそうやけど、さっき解説したように課税標準額は年々下がっていくから、最初の何年かが軽減されるのは大きいよ!
4.新築住宅の固定資産税、金額シミュレーション
Ⅰ.シミュレーションの前に、評価替えについて
前述のように概念上は建物の課税評価額については本来毎年一定額ずつ引き下げられていきますが、
実際は毎年下がるわけではありません。
課税標準額は3年毎に見直されるため、
3年間は課税標準額・固定資産税額共に変化せず一定となります。




毎年ころころかわるわけじゃないんや?




役所の実務を考えた時に、膨大な数の固定資産に対して毎年評価替えをするのはあまりにも現実的じゃないんよね
この評価替えの時期は課税資産毎に決まっているわけではありません。
直近では以下のように決まっています。
- 前回は平成30年度
- 今回は令和3年度
- 次回は令和6年度
令和4年度・令和5年度は固定資産税の税額が据え置かれます。
つまり、今固定資産税を支払っている人も、
令和5年度に固定資産税の支払いを開始した人も、
次に評価替えが行われるのは揃って令和6年度となります。
Ⅱ.新築住宅の固定資産税
さて、固定資産税がいくらくらいになるのかシミュレーションしてみましょう。
条件は以下です。次の都市計画税でも同じ条件とします。
仮条件項目 | ポイント① | ポイント② | ポイント③ |
---|---|---|---|
令和2年12月15日取得 | 令和3年度から 固定資産税がかかる | – | – |
木造の新築住宅を取得 (床面積115m2) | 本体価格2000万円とする (計算には無関係) | 耐用年数22年 | 減価償却率0.046 |
長期優良住宅認定 | 最初の5年間は 固定資産税半額の特例 | 税額軽減の特例は 120m2以下の部分に適用 | – |
課税評価額 (取得原価) | 新築当初で1000万円とする | – | – |




この条件で具体的に計算してみるよ
まず、課税標準額が1000万円なので、これに税率1.4%(0.014)を掛けます。
これが基本の税額となります。
1000万円 x 1.4% = 14万円
長期優良住宅なので5年間は半額になります。
14万円 x 1/2 = 7万円
この金額が固定資産税の年額です。
固定資産税は年4回払いなので、1回分は
7万円 x 1/4 = 1.75万円
令和3年度~令和5年度は税額が変わらないので年額7万円のままです。




令和3年度~令和5年度は評価替えが無いから税額は年間7万円のままだよ!次に評価替えを考えてみよう
令和6年度に評価替えがあります、この時の課税標準額を求めていきます。
令和3年4月1日時点で1000万円の課税標準額、減価償却率0.046なので
1000万円 x 0.046 = 46万円
概念的には課税標準額は1年毎に46万円ずつ下がっていきます。
- 令和4年→1000万円 – 46万円 = 954万円
- 令和5年→954万円 – 46万円 = 908万円
- 令和6年→908万円 – 46万円 = 862万円
令和6年度の課税標準額は862万円なので、税率1.4%(0.014)を掛けて
862万円 x 1.4% ≒ 12万円
(簡易化の為、端数を切り捨てています)
長期優良住宅なので令和7年度までは半額になるので
12万円 x 1/2 = 6万円
令和6年度・令和7年度は年額6万円となります。(1回分は1.5万円)
令和8年度より、長期優良住宅の税額軽減特例が無くなるため、
令和8年度の税額は年額12万円となります。




一気にあがる!




このあたりが一番きついね
令和9年度には再度評価替えがあります。この時の課税標準額は
908万円(令和6年度) – 138万円(3年 x 46万円) = 770万円
税額は
770万円 x 1.4% ≒ 10.8万円
(端数調整)
1回分は
10.8万円 x 1/4 = 2.7万円
となり、この税額が令和9年度~11年度まで適用されます。
以降同様に課税標準額の減少と評価替えを繰り返すと、
令和21年度に課税標準額が200万円まで下がってきます。
課税標準額は当初の20%を下回ることはありませんので、
令和21年度以降は一定の税額となります。この時の年税額が
200万円 x 1.4% = 2.8万円(1回分7千円)
以降、年額2.8万円が建物が存在する限りかかり続けます。




固定資産税については以上です。
次は都市計画税だよっ
Ⅲ.新築住宅の都市計画税
建物の都市計画税は特に軽減特例が無い為、計算は簡単です。
固定資産税の方で求めた課税標準額に対して税率0.3%(0.003)を掛けるだけです。
税率0.3%は最大であり、自治体によって変わります。




ちなみに我が家の地域では0.2%です
固定資産税で計算した課税標準額を基にして計算します。
- 令和3年度~5年度 → 1000万円(課税標準額) x 0.3% = 3万円
- 令和6年度(評価替え)~8年度 → 862万円 x 0.3% ≒ 2.6万円
- …中間省略…
- 令和21年度以降(課税標準額20%) → 200万円 x 0.3% ≒ 6000円
となります。
5.まとめ
建物にかかる固定資産税について解説しました。
- 固定資産税と都市計画税は併せて徴収される
- 税額は課税標準額にそれぞれ税率を掛けて算出される
- 鉄筋造りの家は木造住宅よりも固定資産税が高い
全てを理解しようと思うと頭が痛くなるような内容かもしれません。
実際のところは固定資産税の通知に従い納税しているだけで全く問題はありません。
しかしながら、ライフプランや固定費の計算を行う時に算出方法がわからないと、
出費の不確定要素になってしまいますので避けたいところです。
無理して鉄筋造りの家を買ったけどこんなに固定資産税が高いなんて…
なんてことにならないように、簡単にでも理解しておきたいですね。
税額計算のポイントをまとめます。
- 課税標準額は納税通知書で確認できる
- 課税標準額を概算する場合は建物本体の価格(税抜き)の50%を目安とする
- 固定資産税の税率は基本1.4%。都市計画税の税率は最大0.3%
- 課税標準額 x 税率 = 年税額
- 新築の場合は3年間、長期優良住宅の場合は5年間は税額が半額
(マンションはそれぞれ5年間、7年間) - 課税標準額と固定資産税は評価替え後3年間一定(次回の評価替えは令和6年度)
- 課税標準額は当初の20%を下回ることは無い
課税標準額については家の構造や設備で変わりますので、
建築前にハウスメーカーに確認すればおおよその金額を教えてくれると思います。
課税標準額さえわかればあとは税率をかけて、
新築の税額軽減を考慮すれば概算できますのでそれほど難しくありませんね。
税金は知らないとどうしても敬遠してしまいがちです。
結構大きな金額を支払っていく事になりますので、
家計を管理するには非常に重要な支出となります。
今回のシミュレーションを用いて、
御自宅の課税標準額や購入予定の建物購入金額に当てはめてみてください。
おおよその税額が見えてくるかと思いますので是非チャレンジしてみてください。
【固定資産税】建物にかかる金額をわかりやすく解説!! おわり
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